忍者ブログ
自分のホムペなどに公開するブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

さっきの記事でいった長編の第一章を載せます。

とりあえず登場人物紹介
北兎桜子(ほくとさくらこ)→主人公なのに華がない、今のとこ。
護朝正義(こときまさよし)→桜子のきゅんな相手になればいいなあ、なりそうにない。
北兎花桃(ほくとかとう)→桜子まま。夫婦共々どっちが名前でどっちが名字なのか分からないのが特徴。
北兎春(ほくとあずま)→桜子ぱぱ。本当はずっと前に書く予定だった小説の主人公だった。

1 朝の占いをかかすべからず。



 十六年前の春。とある病院で、産声が上がった。それはそれは可愛い女の子が誕生した。
 肌は白いのだけれど、頬は薄紅色。閉じても分かるくらい、目は大きく、鼻筋も通っていて。生まれたばかりなのに、もう『美人さん』と呼んでもおかしくはない姿。
 両親はその子を『桜子』と名付けた。桜のように美しい女の子が生まれた時、病院の外にも満開の桜が咲いていたからである。
 誰もが、この赤ん坊がさぞ美しく成長するだろうと思っていた。明るい未来は約束されていた。



 十七年後、春。とある家で、叫び声が聞こえた。それはそれは逞しい女の子が起床した。
 ドタドタと激しい足音をたてながら、二階からひょろりと背の高い女の子が下りてくる。気持ちがいいくらい、ばっさりと切られた漆黒の髪。まだ春だというのに、日によく焼けた顔。大きな瞳にやどる光は性格の大人しさを知らなそうである。
 正直なところ、セーラー服でなかったら、少年といってもおかしくない。



 いいたくないが、信じたくないが。
 これが『桜子』の成長した姿である。あの可愛く可憐な姿は、どこへやら。面影すらないといっていい。不細工ではないが、『美人さん』でも決してない。
 こんな未来、誰も予想などしていなかった。嗚呼、運命の何と残酷なことよ!


「ちょ……お母さん! 何で起こしてくれなかったの!」
 リビングに飛び込んできた桜子に母、花桃はにっこりと笑んだ。
「あら、おはよう、桜子。ご飯ならそこに出来てるわよ」
「うん……じゃなくて!」
桜子は、急いだように食卓に置いていたご飯――ではなく、テレビのリモコンを引ったくった。そして電源をつけた。
「だぁ〜! 占い、終わっちゃった……」
テレビをつけると、画面ではキャスターがにっこりと笑みながら、天気予報図の前に立っている。――彼女はこれの前に放送される占いを見たかった。そして寝過ごし、見られなかったのだ。
 桜子は暫く「う〜」と唸っていたが、やがて諦めた。頬を膨らませながら、どさりと朝食の席につく。
「今日は絶対、牡羊座は最下位だ。間違いないね」
「そんな占い当たりませんよ」
花桃は優しく宥めてやりながら、彼女の目の前に淹れたてのカフェオレをそっと置いた。
 そのタイミングと父がリビングにやって来たタイミングは同じだった。
「桜子、運命は自分で掴むものだよ」
朝からいきなり格好いいことをいうこの父、春は、眼鏡の奥で、優しい笑みを浮かべている。桜子は「クサイ台詞」とため息をつきながら、頬杖をついた。かなり不機嫌なようだ。目覚ましに起きれなかった自分のせいなのに。
 テレビは天気予報を終え、昨日のニュースを紹介するコーナーになっていた。画面には興奮気味な若者がインタビューを受けている。
『いやあ、本当に凄かったんですよ! こうムシバーム星人のビームをしゅっ、と、避けて、んで両サイドからガツンと必殺キック。神ですね。あれは神だ! 特にミス・チェリーブロッサムさんが!』
興奮し過ぎて、いっていることが今ひとつ分からない。
 桜子は眉を潜めながら、それを見つめる。いつの間にか、両親も席について食い入るように画面を見つめていた。
「ムシバーム星人なんて久しぶりに聞くな」
「そうねえ……」
興味深そうに両親達は話すが、桜子はその話題に入るつもりはないようだ。あからさまにため息をついて、興味がないことを示している。
 しかし、両親もテレビも構うことなく、話題を変えなかった。テレビ画面は、キャスターの姿を映す。
『いやあ、本当にヤマトマンの活躍は凄いですね! 特に新しい代になってからは目覚ましいものがありますよ』
「失礼しちゃうわ!」
 まるでキャスターと会話をするように、花桃は声を上げた。勿論、キャスターがそれに応じるわけはなく、代わりに春が憤慨したように頷いていた。
「先代だって凄かったぞ」
「えぇ! とっても!」
「前より宇宙人の侵略行為が増えただけなんだ!」
「そうよそうよ!」
何だかヒートアップしそうな予感。桜子はそう思い、バンッと机を叩いた。
「うるさい。黙ってテレビも見られないわけ!」
じろりと睨みつければ、両親はしゅん、と黙り込んだ。相変わらず、テレビは『今後のヤマトマンの活躍にも、乞うご期待下さい!』と騒いでいたけれど。
 チン、と桜子の目の前にあるトースターから狐色の食パンが顔を出した。桜子はムッとした表情でそれをとり、たっぷりとジャムをつけた。それはもう、たっぷりと。桜子はこの苺ジャムを大層気に入っている。粒が他のジャムより大きいのだ。もうトーストがテカテカになるまで塗る。というか、乗せる。
「つけすぎは体に悪いぞ」
春が気遣ったようにいう。
「いいの!」
桜子は反抗するかのごとく、更に一さじ乗せて、ざく。大口でかぶりついた。
 と、その時であった。

ピンポーン

朝早くだというのに、鳴り響くインターホン。花桃と春は顔を見合わせた。
「誰かしら」
「新聞かな?」
「そんなわけな――……」
いじゃない、と花桃がいい終わらぬ内に、玄関の扉が開く音がした。何という無礼者だろうか! 流石に桜子もそれには驚く。ドタドタドタ。こちらに向かって足音が近づいてくる。皆が一斉にリビングの入口を見つめた。
「こらぁっ! 桜子!」
 扉が開いて飛び込んで来たのは、桜子と同じくらいの年格好をした、少年。セーラー服の桜子に対し、彼は学ランを着用している。が、それは何だか乱れていて、下手に着崩した感じだ。恐らく、大慌てで来たためだろう。息も乱れている。
「「正義君!」」
両親が驚いたように声を上げた。正義と呼ばれた少年は息を整えながら、「お早う御座います」と小さく頭を下げた。
「何さ、朝っぱらから」
 一方、桜子は少年の姿を見た途端、態度が冷めた。再びトーストをかじり始める。この『どうでもいい』といいたげな声に、パッと正義の顔が桜子に向いた。ちょっと怒っている。
「おい! 何、のんびりしてんだよ!」
「何が?」
「お〜〜ま〜〜え〜〜」
ずずずぃっと、正義は桜子に顔を近づける。桜子はぐぐぐぐぃっと、手で彼の顔を押し退けた。
「さっきっから何度も電話きてるはずだが?」
「……ああ、ごめん。音切ってた」
 謝る気のない謝罪を述べ、桜子は携帯を胸ポケットから取り出した。
「本当だ。不在着信が二十件も」
画面には着信履歴が表示され、発信元は全て『チキュー防衛軍ニホン支部』と書かれていた。それを確認し、桜子は何事もなかったかのように、それをしまう。
「私、今日は行かないから。昨日始業式で、さっそく学校休むわけにはいかないし。一人でも大丈夫でしょ」
「な……っ!」
 桜子の言葉に絶句する、正義。口をパクパクさせている。流石に、春もこの娘の態度に厳しくいった。
「こら! 何をいってるんだ、桜子! 任務の連絡だろう? 早く行ってきなさい!」
負けじと桜子も睨み返す。
「じゃあ、お父さんは私が留年していいっていうの?」
「任務の場合は公欠扱いだろう」
「授業を受けなきゃ同じじゃん! ノート写すだけで勉強が済むと思ってんのっ?」
 ぐっ、と春は黙り込む。勝った、と桜子は確信した。
 が。そうもいかないのが人生というもので。正義が横槍を入れた。
「つか、お前。最初から勉強する気ねえじゃん」
 ぐっ、と今度は桜子が黙る番だった。正義を睨みつけるが、彼は嘘をついてはいないので、堂々としている。
 このままいい争っていては意味がない。花桃はそう感じたのだろう。落ち着かせるような声で、正義に話掛ける。
「今回は何がどこに来たの?」
「トーキョーに。ニックッキ星人が……」
この答えに「あら」と、花桃は突破口を見つけたらしく、手をポンと叩いた。
「トーキョーなら近いじゃない! 転送機要らずよ。酔わなくて済むじゃない。それにニックッキ星人なら貴方の力で、ちょちょいのちょいよ。学校も途中から行けるわよ!」
にっこりと桜子に笑いかけ、「ね、桜子」といい聞かせる。しかし、桜子はぷいっと外方を向いた。
「やーだ! い・か・な・い! 正義君一人でやってよ!」
「………………」
 急に正義は黙る。暫く黙った。まるで力を溜めているようだった。桜子も花桃も春もじっと正義を覗き込む。そして
「だぁああ! こうしている間にも、ニックッキ星人に人々が襲われてんだぞ!」
集まる視線を散らすように、溜めていた力を一気に放出するように叫び、おもむろに桜子のトーストを持った右足腕をむんずと掴んだ。彼はどうするか考えていたらしかった。そしてこの方法に至ったのだ。
「ちょ……っ離して!」
「女の子相手に力づくってのは嫌だけど、お前だし、緊急事態だし、まあよし!」
一人で結論を出し、嫌がる桜子をそのまま引きずり始める。椅子から急に立ち上げさせられた桜子はそのままバランスを崩し、倒れるが、正義は構うことなく玄関へと引っ張っていった。ズルズル。まるで荷物のようだ。
「こ、の……っ! 嫌だーっ! 離せーっ! 変態! 熱血馬鹿!」
 桜子も必死で抵抗する。回りのものを掴む。が、テーブルの角を持てばテーブルは一緒についてくるし、掴めそうな壁を掴めば、何ということだ、ぼろっと欠けた。藁をも掴む思いで、椅子にかけられていたタオルを引っ張ってみたが、あっさりと椅子を離れ、付いてきた。ことごとく家に裏切られた桜子である。自由な左手で、解放を試みる。正義の掴む手を叩いたり、指をこじ開けさせてみたが、やはり少年。少女の力など、ものともしない。――とはいえ、桜子の力に勝てる人間は、この正義ぐらいなのだが。
 最後の砦、と両親を涙目で見てみた。――しかし、無駄だというのは最初から分かっていた。
「健闘を祈るよ、二人とも!」
「油断しちゃ駄目よ」
にこやかに送り出す体勢だ。何て酷い両親だ! 人の子とは思えない! 桜子は心の中で叫んだ。そして口では
「……やっぱり。今日はついてない……」
嘆きの言葉を溢した。とうとう抵抗を諦め、ズルズルと大人しく引きずられる。
 バタン。玄関の扉が閉まる音がする。ようやく家が静かになった。春と花桃は顔を見合わせ、笑い合う。
「明日も話題になりそうね」
「そうだなあ」
そして何事もなかったかのように朝食を摂り始めた。
 テレビは既に違う話題に移り、キャスターが『現在の時刻は七時十四分です』とにこやかに時を知らせていた。


続く


ギャグ?ラブコメ路線に走ろうとしています。
このあと、主人公よりも濃すぎるキャラが出ます。



さて、勉強します、今から。
PR


忍者ブログ [PR]
カレンダー
07 2025/08 09
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
フリーエリア
最新コメント
[03/15 shelling.p.w.b.ford]
[03/15 ひな]
[03/15 ちぅ]
[03/13 ひな]
[03/13 チゥ]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
No Name Ninja
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索