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一個ずっと載せ忘れていた短編を一つ。旧携帯から引っ張りだしてみました(笑)



結構最後のとことか気に入ってますが、落選作品(笑)

なんかねギャグじゃない場合はファンタジーとかよりも何気ない話を書くのが好きなんですよ。でもやはりそういうのってウケないんだろうなあ。
凹みはしない。わしは好きなことをしているだけで幸せなのでね。少しでも共感を覚えてくれる人がいれば満足だしね。


そいや前に出したやほにだした小説はどうなったかなあ…どうせ落選だがな。

「死んだら人は星になるんだってね」
 珍しく父さんがベランダで晩酌をするもんだから、思わず僕は言ってしまった。そしてすぐに、後悔した。
「母さんもか」
やはり言うべきでなかった。僕はごめん、と小さく呟いたあと
「知らない」
素っ気なく答えた。
 ようやく一年が経ったばかり。母さんが死んで。だけど父さんの傷は癒えていない。僕には分かる。
 母さんは風邪引いていたのに、それをずっと共働きで無理をしていて死んでしまった。父さんは気づいてやれなかったことに凄く後悔している。
 僕も勿論、後悔している。だけど、父さんほどじゃないだろう。僕は深く考えられるほど、そんなに長くは生きていなかったし。
 まずいな、という雰囲気が僕の中だけで流れた。考えなしに言ってしまった。僕はきっと馬鹿なのだ。
 父さんは僕の言葉にどう思ったのか、ただ無表情にコップに焼酎を注いで、ちびっと一口飲んだ。
「でもよ。母さん、体が小せえからこっからじゃ見えねえだろうな」
口調は、何だか明るかった。生前も父さんは母さんを『小さい』ってからかっていたっけ。僕は少しだけ、気が楽になって冗談を返した。
「でも母さんは騒がしいから、きっと眩しいよ。見えると思う」
「あぁ……かもな」
父さんは笑ってくれた。
 だけど、もう一口、酒で口を潤す頃には。また無表情になっていた。
「でもよ、あいつ……寂しくねえのかな……」 え、と僕は声を漏らす。今度は少し、悲しそうな口調だった。
「他の星も一杯あるんだし、大丈夫じゃないの?」
僕がこう言うと、父さんは暫く黙って、うん、と言った。
「……どんなに人が沢山いても、俺は寂しいけどな」
小さく、本当に小さく、父さんは呟いた。僕は聞こえないふりをした。
 暫くの沈黙のあと、父さんは、おい息子、と呼んだ。僕を名前ではなく、そう呼ぶ時は、酔っているときだ。毎日晩酌するくせに、父さんは酒に強くない。
「お前は馬鹿やるなよ」
「何を」
「……うるせえよ」
自分で訳も分からないことを言ったくせに、父さんは一方的に会話を阻んだ。すくっ、と立ち上がり
「俺は寝る」
のそのそと寝室へと向かう。本当に意味が分からない――かも。
 いや、分からないふりをしているだけだ。本当は分かっている。
  僕はそっと、開けっぱなしのベランダの戸を閉めた。

 夜空には数えきれないほどの星が、瞬いていた。





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